女子高生を惹きつけるプリクラの技術経営 ~第4回イノベーションにモードを取り入れる

■ 雑誌創刊、直営店オープン

パリコレで創られるモードは、雑誌等のメディアによって、言わば「強制的に」世界中に広められる。フリューでも、それに近い情報発信が行われている。例えば、メディアによって広まる写真に、機種独自のブランドイメージを持たせる。

「2011年に発売した『LADY BY TOKYO』が作る写真は、プリクラを使う人が見れば、それが新しい機種で撮ったものだと、すぐわかるようなものになった。そのくらい、それまでのプリクラとまったく違ううつりになった。今は、プリクラで作った写真は、皆がすぐにTwitterやFACEBOOKに貼り、そこに機種の名前が合わせて書かれることも多い。だから写真に、機種独特のうつりが表現されれば、ユーザの口コミだけで、すごいスピードで、機種の情報は広まる。もう他のメディアはいらないくらい。」

また、プリクラ以外も利用する。フリューは、2012年6月に、雑誌『GIRLS’ TREND』を創刊した。

「プリクラのコンセプトは、プリクラ以外のものを使っても、情報発信できるのではないかと考えている。『GIRLS’ TREND』は、プリクラの新機種と、女性向けファッション誌の要素が融合した新しい雑誌。通常のファッション誌と比べて小さいB5サイズで、気軽に持って帰ってもらえることを意識した。」

ページ数は少ないが、「ファッション、メイク、カルチャーからプリクラまで」と書かれているように内容は豊富で、1枚1枚の紙も厚く、無料で配られているものらしくない。1年に3回発売するプリクラの新機種に合わせ、年に3回刊行する。ゲームセンター等プリクラを設置する場所で配布され、13万部発行している。

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フリューが発行する雑誌

また2012年より、フリュー直営のプリクラ専門店『girls mignon』を、日本各地の地方都市の駅ビルに開店し始めた。

「ゲームセンターの数自体、今、全国で減少傾向にある。プリクラを、ゲームセンターだけに任せてはいられない。ゲームセンターがあっても、とくに地方では、最新の機種を設置していない場合も多い。全国の女性達に常に一番良い機械を使ってもらうために、自分達で店を作ることにした。現在、新潟、山形、藤沢、徳島、佐賀の5箇所で開店している。早速、成人式や卒業式の日などは、会場からそのまま、大きな団体が移動してやってきているみたい。」

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フリュー直営のプリクラショップ

フリューが提案するプリクラはもはや、元祖プリクラとは全く違うものである。「プリント=印刷」のための機械でもなければ、ゲームセンターのものでもない。パリコレから発信されるCHANELの”モード”が、ファッションカメラマンによる特徴的なビジュアルイメージと、雑誌、実店舗を使って世界に広められていくように、フリューの新しい機種も、プリクラの「うつり」が作る特徴的なビジュアルイメージと、雑誌、実店舗を使って、広められていく。フリューのプリクラ機が、プリクラに新しい様式をもたらし、女子中高生が支持されているのは、そういう意図的な仕掛けによるのだとわかった。

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