女子高生を惹きつけるプリクラの技術経営 ~第3回先導的ユーザとのネットワーク

■ プリクラハッカーを表舞台に

フリューには、グループインタビュー以外にも、このようなプリクラハッカーのような女性達を集めるシステムがある。2011年には、フリューのプリクラ機で作った写真データを応募し、インターネット投票で選ばれた3名が雑誌に掲載されるコンテスト『L-1グランプリ』が開催された。さらに2012年には、インターネットで得られた20名が、実際のステージに集まって芸能プロダクションのスカウトの前でタレントオーディションを行う『ヒロインフェイスコンテスト』が開催された。

2012年8月、表参道で行われたオーディションの最終選考会に実際に行かせてもらった。26万人もの応募者の中から、インターネット投票で選ばれた20名、そこまでの審査はプリクラの写真のみだったが、初めて現実のステージに現れた。中には驚くほど、写真と印象の違う人もいた。そこに集まっていたのも、プリクラの画像処理を知り尽くしている、プリクラハッカー達だ。

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『ヒロインフェイスコンテスト』最終選考に残った女性達

また、2013年2月、幕張メッセで開催されたゲームセンターのアミューズメントマシンの展示会「アミューズメントマシンショー」、フリューのブースを訪ねた。フリューのブースでは、若い女性のコンパニオンがプリクラの紹介をしてくれた。新本氏にたずねると、彼女たちは、ユーザの女性達ということだった。グループインタビューやヒロインフェイスコンテストを通じて、フリューとつながりのある女性達ということだった。

「昨年まで、プリクラの紹介は、展示会側が用意したコンパニオンが行っていた。しかし、プリクラを正しく紹介するには、プリクラをよく知るユーザがするのが一番良い。だから今年は、フリューで直接、コンパニオンを起用した。」

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フリューブースのコンパニオン達

「そういうプリクラが大好きな女性達が、ぜひ、最終的にフリューに就職して欲しいと思う。フリューでは、採用の履歴書の写真も、プリクラOKにしている。」

就職活動の常識をくつがえす採用計画である。フリューでは、“使い手”だけでなく、“作り手”としても、プリクラハッカーのような女性達を集めようとしているのだろうか?

全国の隅々まで設置するプリクラの開発であるにも関わらず、偏った女性を関わらせるのはなぜか?第4回はそのヒントとなる、フリューのイノベーション思想について紹介する。